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背景
一般に、工業的製品としての様々な機能性セラミックス材料は、地下資源を原料として高温で作製されている。これに対して、貝殻や人間の骨などは生物が作るセラミックスとして知られている。
1980年代に、特殊なバクテリアの“走磁性細菌”が、細胞内に磁性酸化鉄Fe3O4ナノ粒子を鎖状に作製することが見出され非常に注目されている。
さらに、身近な溝や小川、山中の湧水など自然界に見受けられる褐色の沈殿物は、特殊なバクテリアが作る酸化鉄である。これらは、従来美的景観を損なうものとして嫌われてきた。
バクテリアが作る酸化鉄(その1) -細胞内に形成-
走磁性細菌:・Fe3O4ナノ粒子
・磁性ナノ粒子:チェーン状に並ぶ
・Magnetosome粒子
・直径:35〜120nm
バクテリアが作る酸化鉄(その2) -細胞外に形成-
(1)G:Gallionella ferruginea ⇒ ねじれリボン状酸化鉄
(2)L: Leptothrix ochracea ⇒ パイプ状酸化鉄
目的
目的と取組み
本プロジェクトは、鉄酸化細菌が常温の水中で細胞外に作るユニークな形状の酸化鉄に注目し、これを材料科学的に興味ある材料と位置付け、その特徴の解明と形成機構の解明などとそれらの応用を目指して、異分野の研究者が連携し、多面的・総合的に取り組むものであり、世界で初めてのプロジェクトである。
- 我々は、バクテリアが作る酸化鉄を“BIOX”と命名した。
--- Biogenous Iron OXide
本研究グループのこれまでの結果
BIOXの簡単なキャラクタリゼーション
低結晶性,微粒子から成るチューブ状酸化鉄
H. Hashimoto et al. Journal of Magnetism and Magnetic Materials 310 (2007) 2405?2407
研究目的
以上の結果を更に発展させると共に応用分野を模索する。
その一例としてLiイオン電池正極材料として応用。
研究グループ
学内での位置づけ
学内での位置づけ
本プロジェクトは、岡山大学からの特別教育研究経費事業(プロジェクト推進)として、H20〜24年度の5ヶ年のプロジェクトである。
大学院自然科学研究科では、本プロジェクトを重要プロジェクトと位置付け、「先端自然科学推進本部」の中で“バイオジナス・マテリアル・センター”を設けて支援している。
バイオジナス・マテリアル・研究センター
バイオジナス・プロセスと物質/材料の研究開発
- バイオジナス・物質合成プロセスの解明と応用
- バイオマシニング・プロセスの探索と応用展開
- バイオジナス物質の探索とキャラクタリゼーション
- バイオジナス材料の機能探索と応用
- 微生物の培養・単離・同定
- 「バイオジナスマテリアル・ライブラリー」
・貴重微生物資源保存管理
・バイオジナス酸化鉄の保存管理
・Data-Base: 遺跡出土ベンガラなど
特徴
- 本プロジェクトは、異分野融合・文理融合の学際的最先端研究プロジェクトである。
- 省エネ・省資源、低環境負荷、安全。
- 参加研究者は、全学にわたり、総勢約20研究室に及ぶ。
- 国内外の研究機関との多面的な連携。
- 材料科学的・微生物学的に、最先端透過電顕によるナノスケールで観察・分析に基づく多角的・総合的検討によって、革新的な成果をもたらす。
・・・本学「ナノ構造分析解析ユニット」との連携
異分野融合性・学際性
関連分野
材料化学、微生物学、触媒化学、電気化学、固体化学、結晶化学、表面化学、構造化学、表面物理、物性物理、鉱物学、地球科学、バイオテクノロジー、医学歯学、 セラミックス、金属材料学、芸術陶芸、考古学、ほか
ナノ構造解析・分析ユニットとの連携
本プロジェクトでは、様々な微生物(バクテリア)とそれらが作る酸化物BIOXを取り扱っている。とりわけ注目している点は、BIOXのナノレベルの微細構造や元素分布の解明やバクテリアがBIOXを作るプロセスの解明である。
これらを明らかにするために重要な情報を得る上で、本学の「ナノ構造解析・分析ユニット」との連携は必要不可欠であり、現在まで活発に活用し多くの世界初の成果を挙げている。同ユニットには最先端高精度透過電子顕微鏡TEM/STEMがあり、EDX, EELSやHAADF機能などが付属しているので、最適である。
これまでに得られた成果の1例は次の通りである。すなわち、ねじれリボン状G-BIOXとそれを作るバクテリアGallionella細胞の同時撮影に成功したばかりでなく、そのG-BIOXのナノレベルでの微細構造と元素分布を世界で初めて明らかにし、高い評価を得ている。
今後も、同ユニットとの連携により、世界をリードする数々の成果が期待できる。