イオン液体材料
イオン液体の性質を有する機能性材料を開発しています。
イオン液体コーティング剤の開発
イオン液体は室温付近において液体であるような有機塩の総称で、構成イオンによって親水・撥水性を制御することが可能です。当研究室では、このイオン液体構造をシランカップリング剤へ導入することによって、イオン液体の性質を持つシランカップリング剤(イオン液体シランカップリング剤, ILSC)を合成しました 。またそれらを無機材料表面へ担持することで材料表面の濡れ性を制御できることを示しました。この材料を帯電防止剤や撥水・撥油コーティング剤などに応用することを目指しています。
- 参考文献
特開2014-156529
高イオン伝導性を示す高分子イオン液体の開発
主鎖にイオン液体部位を有する高分子は主鎖型高分子イオン液体(Main-chain poly(ionic liquid)s)と呼ばれます。この材料は、優れたイオン伝導性を示すため、固体電解質やセンサーなどへの応用が期待されています。しかし、合成法が煩雑なため、あまり合成事例がありません。
本研究室では、クリック反応性イオン液体モノマーを開発しました 。このモノマーを用いたクリック反応によって、加熱のみの一段回反応で主鎖型高分子イオン液体が可能になりました。この高分子は、30℃で10-5 S/cmオーダーの優れたイオン伝導性を示すことがわかっています。本研究室では、モノマーを精密に設計することによって、高分子イオン液体の物性制御を試みています。
- 参考文献
- 特許第7376072号
R. Hirai et al., ACS Omega 6(15), 10030–10038 (2021)
R. Hirai et al., RSC Adv., 10, 37743–37748 (2020)
- 特許第7376072号
高強度イオンゲルの開発
高分子の三次元架橋ネットワークにイオン液体を溶媒として膨潤させた材料をイオンゲルと呼びます。イオンゲルは、不揮発性、二酸化炭素吸収能や高イオン伝導性を示すため、高性能な二酸化炭素分離膜や過酷な環境でも作動するアクチュエータとしての応用が期待されています。しかし、イオンゲルは機械的強度が低いため、実用化には高強度化が課題となっています。
本研究室では高分子イオン液体の架橋ネットワークから成るイオンゲルにシリカ粒子のようなナノ材料を微量添加すると、ダブルネットワーク構造を形成することによって、イオンゲルが高強度化することを見いだしました。加えて、このイオンゲルは高い耐熱性や耐水性などの従来のハイドロゲルでは見られない特性を示すこともわかっています。本研究室では、イオンゲルの高強度化メカニズムを明らかにして、イオンゲルを二酸化炭素分離膜やソフトアクチュエータへ応用展開することを目指しています。
- 参考文献
T. Watanabe et al., Soft Matter 16, 1572–1581 (2020)
T. Watanabe et al., Soft Matter 19, 2745–2754 (2023)
Y. Mizutani et al., Soft matter 20, 1611–1619 (2024)
高分子イオン液体系ビトリマーの開発
輪ゴムや吸水性ポリマーのような架橋高分子は、共有結合の架橋によって構造が半永久的に固定されているため、二次加工やリサイクルが難しいという問題があります。そのため近年では「常結合性動的共有結合」を利用した、熱などの周辺環境に応答して架橋構造が組み替わる「ビトリマー」と呼ばれる新しい架橋高分子に注目が集まっています。ビトリマーは、頑丈でリサイクルが容易な材料や、熱や光で自己修復する材料への応用が期待されています。
本研究室では、クリック反応性のイオン液体モノマーを基盤とした、イオン伝導性に優れたビトリマーの開発に取り組んでいます。
- 参考文献
R. Hirai et al., ACS Omega 6(15), 10030–10038 (2021)
R. Hirai et al., RSC Adv., 10, 37743–37748 (2020)