マイクロ流体工学

マイクロ流体工学

マイクロ流路とは髪の毛1本程度の細い流路を有する流路の総称です。マイクロ流路内を流れる流体は、レイノルズ数が低いため、層流となります。そのため、マイクロ流路内は、大きさのそろった液滴や安定なジェット流の形成に有利な環境になっています。当研究室では、マイクロ流路内で形成された大きさのそろった液滴やジェット流を鋳型として、微粒子やナノ繊維を調製するプロセスを開発しています。実験的な研究とともに、汎用の数値流体力学(CFD)シミュレーションソフトウェアCOMSOL Multiphysics®を用いてマイクロ流路内を流れる流体のシミュレーションもおこなっています。具体的には、CFDシミュレーションによって、液滴生成やジェット流形成に適したマイクロ流体デバイスを設計しています。

また、マイクロ流路内では、流体の進行方向を現象の経時時間と捉えることが可能です。当研究室ではこのマイクロ空間の特長を利用して、マイクロ流路内の流れを高速度カメラで直接観察することによって、液滴やジェット流から微粒子、繊維が形成される様子を解析する研究もおこなっています。

マイクロ流体デバイスによる乳化

マイクロ流体デバイスによる乳化Y字型、T字型、二重管型などの合流部を有するマイクロ流路に水相と油相を送液し、合流部で分散相を連続相でせん断することによって、単分散エマルション(W/OエマルションやO/Wエマルション)を調製できます。また連続相流速や粘度などを変えることによって液滴径の制御も可能です。さらに、流路の数を並列に増やすことによって、エマルションの量産も可能です。

当研究室では、流路の設計から新規材料調製プロセス、さらにその量産プロセスの開発を一貫して研究しています。

  • 参考文献
    J. Kubota et al., Colloid Surf. A 302, 320–325 (2007)
    E. Kamio et al., Lab Chip 9, 1809–1812 (2009)
    T. Harada et al., Jap. J. Appl. Phys., 49, 07HE13 (2010)

マイクロ空間における液滴生成シミュレーション

当研究室では、マイクロ流体デバイスを用いて調製された単分散液滴を鋳型として、微粒子・マイクロカプセルの調製をおこなっています。新規のマイクロ流路を設計するとき、CFDシミュレーションを用いて液滴生成に適したデバイス形状を決定しています。

マイクロ湿式紡糸プロセスにおけるファイバー調製条件のモデル化

マイクロ湿式紡糸プロセスにおけるファイバー調製条件のモデル化当研究室では、マイクロ湿式紡糸法を用いたマイクロ/ナノ繊維の調製をおこなっています。本手法では、SUS製のマイクロ流体デバイスを使用するため、繊維調製時にデバイス内部を観察することができません。そのため、デバイス内部の流体挙動をCFDシミュレーションによって解析することによって、流体の送液条件の探索やデバイス構造の改良をおこなっています。

液滴内相分離現象の経時観察

マイクロ流路内では、流体の進行方向を現象の経時時間と捉えることが可能です。本研究室ではマイクロ流路を流れる単分散液滴を高速度カメラで直接観察することによって、液滴内で数秒以内で起こる相分離現象の経時観察を実現しました。本手法を用いて、バッチ系では解析が困難な相分離現象のメカニズム解明に取り組んでいます。