1. 環境調和型の新しい触媒反応の開拓:
    Development of Novel Catalytic Processes for Green-Sustainable Chemistry.

     炭素−炭素結合をつくるときには、有機ハロゲン化合物を一方の出発原料にして、反応性の高い有機金属化合物(例えばGrignard反応剤)を調製して使うことが多いのですが、反応のあと、不要な金属ハロゲン化物が化学量論量副生することが避けられません。最近、グリーン・サステイナブルケミストリー(持続可能な社会を目指すための化学)の一環として、遷移金属触媒による不活性な結合、例えば炭素−水素結合や炭素−炭素結合の活性化反応が注目されています。

    レニウム錯体触媒によるC-H結合活性化を利用する合成反応:

     触媒による炭素−水素結合活性化反応は金属ハロゲン化物が副生しない反応であるため、非常に重要な反応で、ルテニウムやロジウム錯体を用いる手法が従来、報告されていました。しかし、まだGrignard反応剤のように使うには問題がありました。私たちは、レニウム錯体を用いると、その問題点のいくつかが解決できることを見いだしました。

    レニウム錯体触媒によるC-C結合の切断と不飽和化合物の挿入:

     「炭素−炭素結合を切断して、あいだに別の分子を自由に挿入する。」 有機合成の夢のひとつです。レニウム錯体を用いると、歪のない環である6員環に三重結合をもつアセチレンを挿入させ、環拡大反応が行なえることを見いだしました。夢の実現への第一歩です。

    ルテニウム錯体触媒による穏和な条件下でのニトリルの加水分解反応:

     ニトリルの加水分解は教科書にも載っている反応ですが、穏和な条件下での活性の高い触媒は実験室レベルだけでなく、工業的にも求められています。ルテニウムにピリジルホスフィンの配位した錯体が高活性を示すことを見いだしました。

研究テーマ