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研究テーマ

V.伝統技術・歴史考古学と材料科学の融合領域研究

(4)石見銀山遺跡の銀精錬:(近世日本の非鉄金属精錬技術-鉱山遺跡における研究について)

概要

2008年にユネスコの世界遺産に指定された16世紀の世界的な大銀山の一つである石見銀山遺跡の科学調査を中心に、当時の非鉄金属(特に銀)製錬技術の体系化を目指して研究を進めている。銀精錬に関して、遺跡から出土した様々な遺物について科学的な分析手法を駆使し調査し、その結果を鉱床学、冶金学、地球科学的な知見を基に詳細に解析することで、当時の銀精錬技術を明らかにすることを目指している。    

一連の研究は、平成9年から現在に至るまでの長期にわたる、島根県教育庁の「石見銀山科学調査」(リーダー:村上隆先生(奈良国立文化財研究所))で、我々の研究室のメンバーが一部参加して、実施したものである。    

例えば、原料(鉱石)から製品(銀塊など)までの、製錬工程で廃棄されたものも含めて、発掘調査と連携しながら一貫した調査を行っている。製錬の時に廃棄される鉱滓(カラミ)には、原料や添加剤の情報、加熱した温度や冷却の状況など、様々な情報の手掛かりが残されているため、多様な調査を実施している。また、遺跡の銀精錬跡周辺から出土した"ゆりかす"(精錬あとの不要物、スラグ)の成分元素や微細構造などを、Spring-8放射光の高精度X線回折装置などを利用して調査し、微細構造観察・解析など多様な分析・観察装置の結果と総合して検討した結果、石見銀山遺跡での銀鉱石からの採鉱プロセスや精錬プロセスについて貴重な知見を得た。また、石見銀山での特徴的な「灰吹き精錬」プロセスについても、模擬実験を行って科学的に検討を加え、この「灰吹き法」の特徴を明らかにする研究も進めている。    

石見銀山絵巻

 

 

(「石見銀山遺跡総合調査報告書」第1冊(島根県教育委員会編集,1993年3月)より引用)

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