微粒子・マイクロカプセル

微粒子・マイクロカプセル

マイクロ化学プロセスや各種重合プロセスを駆使してナノ〜マイクロサイズの微粒子やマイクロカプセルなどの機能性コロイド材料調製プロセスを開発しています。

溶媒拡散法による単分散高分子微粒子の調製

溶媒拡散法による単分散高分子微粒子の調製酢酸エチルは水への溶解度が高い有機溶媒です。そのため、酢酸エチル/水系エマルションを用いた微粒子調製では、調製されたエマルションをそのまま多量の水中へ注ぐだけで高分子が析出し、微粒子が得られます。当研究室ではこの簡便な微粒子調製法を「溶媒拡散法」と呼称し、様々な微粒子調製に適用しています。たとえば、マイクロ流体デバイスを用いた乳化と溶媒拡散法を融合することによって、単分散なポリ乳酸微粒子を連続調製できます。本手法は、ポリ乳酸に限らず、溶媒に可溶な高分子であれば、どの高分子にも適用可能な微粒子調製法です。

  • 参考文献
    T. Watanabe et al., Soft Matter 7, 9894–9897 (2011)

液滴内相分離による油内包マイクロカプセルの調製

液滴内相分離による油内包マイクロカプセルの調製マイクロ流路を用いて調製された単分散な油滴内で、高分子濃厚相と貧溶媒を相分離させることによって、油(貧溶媒)を内包した単分散なマイクロカプセルが調製できます。この手法は、様々な高分子と油の組み合わせに適用できるマイクロカプセル調製法です。当研究室では、この技術を利用して蓄熱マイクロカプセルや造影剤を内包したマイクロカプセルを開発しています。

  • 参考文献
    T. Watanabe et al., Langmuir 29, 14082–14088 (2013)

in situ重合法によるマイクロカプセルの調製

in situ重合法によるマイクロカプセルの調製水中油滴型(O/W型)のエマルションを調製後、メラミンとホルムアルデヒドのプレポリマーをエマルションに添加し加熱すると、油滴がメラミンホルムアルデヒド樹脂膜によって覆われます。このマイクロカプセル化手法は古くから知られていますが、その重合メカニズムは複雑なため、未だ膜厚や膜物性の制御法はあまりわかっていません。

当研究室では、本手法に適用可能な新規膜物質の探索や膜形成メカニズムの解明について研究しています。また、マイクロカプセルの蓄熱材への応用についても研究しています。

  • 参考文献
    T. Tsuneyoshi et al., Mater. Sci. Eng. B 222, 49–54 (2017)
    E. Kamio et al., Colloid Polym. Sci., 287, 787–793 (2008)
    E. Kamio et al., Langmuir 24, 13287–13298 (2008)

複合液滴 (ダブルエマルション)の調製

複合液滴 (ダブルエマルション)の調製マイクロ流路の構造や送液方法を工夫することによって、従来の機械的な乳化法では困難な単分散かつ単核のWater-in-Oil-in-Water (W/O/W)エマルション(ダブルエマルション)も調製も可能です。

当研究室では、ダブルエマルションを鋳型として巨大リポソームや水内包マイクロカプセルの調製にも取り組んでいます。

水内包高分子マイクロカプセル

水内包高分子マイクロカプセルダブルエマルションの中間相を液中乾燥法や溶媒拡散法、光重合法などで固化させると、内水相が包括された高分子マイクロカプセルを調製できます。このような水内包マイクロカプセルは、薬物輸送担体や化粧品、食品などで有用なコロイド材料です。

当研究室では様々な材料を使って水内包マイクロカプセルを調製し、その膜構造が内包物の徐放にどのように影響を与えるかを研究しています。

水性二相分離を利用したハイドロゲルカプセルの調製

水性二相分離を利用したハイドロゲルカプセルの調製相分離は水と油のような全く性質の異なる物質間で起こることが一般的ですが、水に「高分子と塩」や「異なる高分子」を高濃度で溶解させると水溶液内で相分離が起こり、各物質の濃厚相に分離されます。このような水溶液の相分離状態を「水性二相系」と言います。

当研究室では水性二相分離を単分散水滴内で誘起することによってWater-in-Water-in-Oil (W/W/O)エマルションの調製に成功しました。さらに、この中間相のみをゲル化させることによって、水滴がハイドロゲル膜で覆われたハイドロゲルカプセルの調製にも成功しました。このようなソフトマテリアルは、バイオリアクターや移植医療における細胞の保護材料としての応用が期待されます。

  • 参考文献
    M. Yasukawa et al., ChemPhysChem 12, 263–266 (2011)
    T. Watanabe et al., Langmuir 35, 2358–2367 (2019)

ヤヌス型ハイドロゲル微粒子の調製

ヤヌス型ハイドロゲル微粒子の調製微粒子の世界で、半球ごとに性質が異なる微粒子はヤヌス微粒子と呼ばれます。たとえば、半球が油、水にそれぞれ親和性が高い微粒子であれば、そのヤヌス微粒子は水と油の界面を安定化する安定化剤として機能します。

本研究室では、液滴内相分離による微粒子・マイクロカプセル調製において界面張力や相分離速度を調節することによって、ヤヌス型ハイドロゲル微粒子の調製に成功しました。この微粒子はWater-in-Water (W/W)エマルションの安定化剤として利用できることが期待されます。

  • 参考文献
    T. Watanabe et al., Langmuir 35, 2358–2367 (2019)

逐次的な相分離による多層マイクロカプセルの調製

逐次的な相分離による多層マイクロカプセルの調製二重構造(ダブルエマルション)以上の多層エマルションやマイクロカプセルは、多段階の乳化を介して調製されます。しかしその手法は、煩雑なためほとんど実現していません。

本研究室では、マイクロ流路内を流れる均一な液滴から共溶媒を除去する手法によって、液滴内で逐次的に相分離が進行し、三重〜五重構造の液滴が再現性良く得られることを見いだしました。さらに、それらのモノマー相を流路内で重合することによって、多層構造を維持したマイクロカプセルを連続調製できることがわかりました。このような非平衡構造をもつマイクロカプセルの形成メカニズムと機能創発について研究しています。

  • 参考文献
    T. Watanabe et al., ACS Appl. Polymer Mater., 4(1), 348–356 (2022), Selected as ACS Editor’s Choice

スラグ流を反応場とした高分子微粒子のフロー合成

スラグ流を反応場とした高分子微粒子のフロー合成マイクロ流路内に水と油を等速で送液すると、水と油が交互に流れるスラグ流と呼ばれる交互流が形成されます。マイクロ流路内のスラグ流には、①流路幅が狭いため、伝熱が速い、②スラグの内部循環流によって物質移動に優れるなどの特長を有します。

当研究室では、回分式反応器の代わりにスラグ流をソープフリー乳化重合やシードソープフリー乳化重合として用いることによって、サブミクロン〜シングルミクロンサイズの高分子微粒子を高速連続調製することに成功しました。

  • 参考文献
    E. Kamio et al., Ind. Eng. Chem. Res., 50, 6915–6924 (2011)
    T. Watanabe et al., Macromol. Phys. Chem., 220, 1900021 (2019)
    T. Watanabe et al., Colloid Polym. Sci., 298, 1273–1281 (2020)
    T. Watanabe et al., Front. Chem. Eng., 3, 63 (2021)