NEDO先導的産業技術創出事業とは

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 主導のもと行われる「先導的産業技術創出事業」は、我が国の将来の産業技術力を支える革新的な産業技術シーズの創出と、それを担う次世代人材の育成を目的とし、産学官連携の集中研究拠点と連携した「拠点連携研究」や、グリーン・イノベーション及びライフ・イノベーションのための「課題解決研究」を行う若手研究者(大学・公的研究機関に所属する個人又はチーム)に対して研究費の助成を行う競争的研究資金制度です。

  研究テーマ「革新的マイクロ湿式紡糸プロセスによる高機能ナノファイバーの創製」は平成23年度先導的産業技術創出事業助成のもと行われております。事業実施期間は中間ゲート方式の4年間(平成23年10月~平成27年9月)で,現在は中間審査をクリアして実用化に近づくべく研究の更なる発展に力を注いでいます。

 NEDO先導的産業技術創出事業 http://www.nedo.go.jp/koubo/CA3_00723.html

 

「革新的マイクロ湿式紡糸プロセスによる高機能ナノファイバーの創製」

 
本研究では,次世代の新しい繊維材料である「ナノファイバー」を高精度で生産できる世界初の湿式紡糸法を提案している。ナノファイバー調製可能な主な手法は,「エレクトロスピニング(ES)」や「ナノ溶融紡糸」であり,本技術はこれらの手法に負けない簡便な生産手法であると言える。マイクロ流路内で形成される安定なJet流に“Flow-focusing”と“溶媒拡散”を適用することによって,流体径を常温で1/1000程度まで減少させて高分子ナノファイバーが連続的に調製され,ナノ液滴からナノ微粒子を連続的に調製する“Droplet-to-Particle技術”を発展させた“Jet-to-Fiber技術”と呼ぶことができる(上図)。

 

 エネルギー投入量が極めて少なく常温常圧で連続生産可能な革新的ナノファイバー製造技術は、その膨大な表面積へ機能付与することで, 下図のような細胞培養担体や高性能フィルターなど様々な分野において機能性ナノファイバーを提供でき,この精密な高比表面積材料の生産性を飛躍的に向上させることができます。

 

マイクロ湿式紡糸プロセスより生み出される多種多彩なファイバー群

 生分解性高分子を用いたナノファイバー

ポリ乳酸 (PLA) を原料として用いることで、生分解性を有すナノファイバーの調製を行っています。原料の供給速度によってファイバー直径を自在に制御することが可能です。現在は更なるファイバー表面改質を行っています。

 例)PLAナノファイバー、PLA -ポリエチレングリコールファイバー など

 

異形断面を有すユニークなファイバー

ファイバー原料の溶媒を変更し、溶媒拡散挙動を変化させることで、様々な形状を有すファイバーの調製に成功しています。原料高分子であるポリアクリロニトリル(PAN)はガスバリア性に優れていることに加えて、炭素繊維前駆体としても用いられております。

 例)リボン状PLAファイバー、多孔質PANファイバー

 

相分離により実現した多孔中空ファイバー

溶媒の相分離挙動を利用することで、中空を有するファイバーの調製に成功しています。ノズル形状を変更することなく調製可能であるため、簡便な中空糸製造法であると期待されています。

 

例)中空ポリスチレンファイバー など

 

 

本研究をより良く理解するために

 論文

  • T. Watanabe, Y. Kimura, T. Ono “Microfluidic Fabrication of Monodisperse Polylactide Microcapsules with Tunable Structures through Rapid Precipitation” Langmuir, 29 (46), 14082–14088 (2013)
  • 小野努, 「湿式紡糸法による機能性ナノファイバーの創製」, 化学経済7月号(化学工業日報社), 60, 85-89 (2013)
  • 小野努, 「湿式プロセスによるナノファイバーの連続調製」, コンバーテック9月号(加工技術研究会), 462, 72-75 (2011)
  • T. Watanabe, T. Ono, Y. Kimura, “Continuous fabrication of monodisperse polylactide microspheres by droplet-to-particle technology using microfluidic emulsification and emulsion-solvent diffusion” Soft Matter, 7, 9894-9897 (2011)

 

講演・学会発表・展示会

  • 2014/3/18-20 化学工学会第79年会 口頭発表
  • 2014/1/23 情報機構セミナー 講演
  • 2013/11/28-29 第22回ポリマー材料フォーラム ポスター発表
  • 2013/11/3-8 2013 AIChE annual meeting 口頭発表
  • 2013/9/16-18 第45回化学工学会秋季大会 口頭発表
  • 2013/3/16-18 化学工学会第78年会 口頭発表
  • 2013/1/30-2/1 nano tech 2013 出展
  • 2012/12/21 ナノファイバー研究会第14回例会 講演
  • 2012/12/20 岡山マイクロリアクターネット第15回例会 出展
  • 2012/12/20 中国地域国立5大学連携事業「化学分野における大学研究シーズ説明会」 口頭発表
  • 2012/11/30 産学マッチングデー2012 出展
  • 2012/11/9 近畿化学協会合成部会フロー・マイクロ合成研究会第56回例会 講演
  • 2012/9/19-21 第44回化学工学会秋季大会 口頭発表
  • 2012/8/2     粉体操作に伴う諸現象に関する勉強会 講演
  • 2012/7/28 第6回自己組織化討論会 講演
  • 2012/6/19 International Powder and Nanotechnology Forum in ACHEMA 2012 講演
  • 2012/5/9 岡山地区化学工学懇話会特別講演会 講演
  • 2012/4/23 京都大学マイクロ化学生産研究コンソーシアム1周年記念講演会 講演
  • 2012/3/3 第14回化学工学会学生発表会・宇部大会(西日本地区) 口頭発表
  • 2012/1/20 産学マッチングセミナー in 大阪 出展
  • 2011/11/16-18 INCHEM TOKYO 2011 出展
  • 2011/11/2 岡山大学知恵の見本市 出展

 

 特許

  • 特願2013-131448
  • 特願2013-027639
  • 特願2010-192223, PCT/JP2011/069439