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物質応用化学科
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T はじめに
 人類は、はるか古代よりベンガラ(酸化鉄(a-Fe2O3))の天然鉱物を赤色顔料として用いてきた。日本では1704年に始めて岡山県・備中吹屋村にて、人工ベンガラの量産に成功した。その工程は、銅山から発掘した硫化鉄鉱(Fe1-XS)からローハ(FeSO4・7H2O)を抽出した後に焼成するもので、40日以上要するものであった。この吹屋のローハ及びベンガラは非常に良質であったため日本全国、多方面から需要があったが、なかでも有田焼き・九谷焼きの絵付けに使用されたことからその赤色がいかに鮮やかであったか窺い知ることができる。しかし、製造工程中の亜硫酸ガスの発生および水質汚染のために1965年に同地での製造は中止となった。
 現在、無公害法にて工業的に高純度酸化鉄(a-Fe2O3)が量産されている。しかし、その色彩は吹屋ベンガラと比較して十分なものではない。それ故、吹屋高級ベンガラの深みのある鮮やかな赤色は今なお有田焼陶工らをはじめとして多方面から求められている。
 本研究では、吹屋ベンガラ中の主成分a-Fe2O3以外の含有物に着目し、この含有物とa-Fe2O3の粒子形・粒子サイズが吹屋ベンガラの鮮やかな赤色に深く関係していると推測した。そこで、「現存する吹屋ベンガラ」と「現在の工業的高純度酸化鉄赤色顔料」を材料科学的に比較検討して、その特徴(特に含有物の種類と量および粒子サイズ)を明らかにした上で、この結果に基づき、現代の高純度試薬を用いて色鮮やかなベンガラを開発した。
有田焼の写真
代表的赤絵 有田焼
U 吹屋ベンガラのキャラクタリゼーション
【サンプル】  吹屋ベンガラ豪商田村家に現存する「吹屋弁柄」粉末5種類A〜E
●「吹屋ベンガラ」に
含まれる金属元素

元素 At[%]
A Al 4.74
Si 6.90
Fe 88.36
B Al 0.88
Si 7.46
Fe 91.66
C Al 1.68
Si 2.39
Fe 95.93
D Al 4.23
Si 4.32
Fe 91.46
E Al 4.39
Si 12.23
Fe 83.37
●粉末X線回折図「吹屋ベンガラ」
に含まれる金属元素
●「吹屋ベンガラ」A粉末の粒子観察
【結果】
(1) 三方晶系a-Fe2O3が主成分
(2)
 不純物としてAl,Siを含む  
(3) 平均粒径 約100nm





V 高純度試薬を用いたベンガラ粉末の合成開発
【出発原料】 市販高純度試薬をFeSO47H2OAl2O3またはSiO20〜20%混合
【実験方法】

【結果】 (1)すべての粉末は赤味の強い黄赤色
(2)α-Fe2O3粒子サイズは焼成温度と共に増加し、現存
  「吹屋ベンガラ」よりも小さい
  650℃:約50nm,700℃:約70nm,770℃:約100nm
(3)焼成温度の低下とともに、鮮度は増す
(4)低温焼成(特に650℃)粉末は極めて色鮮やかである

色の評価法:L*a*b*表色系のイメージ図



作成した試料の色調の数値化(L*a*b*表色系)


W 成果
 従来注目されていなかったAlを添加により優れた赤色酸化鉄顔料の開発に成功した

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