無機材料化学研究室
ホームページ



■新着情報

□設備の紹介

■アクセスについて

□行事紹介

■研究テーマ

□論文題目

■メンバー紹介

□研究業績

■地域コンソーシアム

産学官連携プロジェクト


岡山大学
ホームページへ

物質応用化学科
ホームページへ



平成12年度RSP「可能性試験研究開発事業」

「吹屋ベンガラにならう現代高純度試薬からの
超高級赤色酸化鉄顔料の研究開発」
岡山大学大学院・教授 高田 潤
T.概要
 本研究は、有田焼柿右衛門の赤絵の原料として用いられるような深みのある鮮やかな赤色を示す超高級赤色酸化鉄顔料について、吹屋ベンガラの製法を材料化学的に検討しかつその発色メカニズムを明らかにすることによって、現代高純度試薬を出発物として合成・開発し、実用化を検討するものである。特に、従来上記の高級赤色ベンガラが高純度酸化鉄単体では合成が困難であるのに対し、本研究は不純物として微量のアルミナとシリカを添加するばかりでなく粒子サイズを制御することによって超高級赤色顔料の開発を試みる。
U.研究開発項目
(1)吹屋ベンガラのキャラクタリゼーションと発色メカニズムの解明
試料として、当時の吹屋ベンガラ製造豪商田村家に現存する「吹屋弁柄」粉末5種類A〜Eと現代市販工業赤色顔料の高純度α-Fe2O3粉末を用いた。これらの粉末について、粉末X線回折(XRD)実験、SEM観察および分光測色計測定を行った。
(2)現代高純度試薬を用いた人工ベンガラ粉末の合成・開発
現在の市販高純度試薬Fe2SO4・7H2Oを出発原料とし、これにAl2O3またはSiO2を0〜20%添加し、大気中で500〜800℃の温度域で1h加熱した後、水洗・乾燥を行った。得られた試料についてはXRD実験、SEM観察、分光測色計測定を行った。
V.成果
(1)吹屋ベンガラのキャラクタリゼーションと発色メカニズムの解明
・吹屋ベンガラは主にα-Fe2O3から構成され、不純物として微量のAlとSiを含むことを明らかにした。
・これらの粉末は平均粒子サイズが約100nmの微細な塊状粒子である。
・試料Eは、他の試料および現代ベンガラ粉末よりもはるかに鮮やかな赤黄色を示すことを見出した。
(2)現代高純度試薬を用いた人工ベンガラ粉末の合成・開発
Fe2SO4・7H2Oを650℃以上で加熱することによってα-Fe2O3が生成することが判った。
・α-Fe2O3粉末の粒子は、加熱温度が高い程大きく成長することを明らかにした。例えば5%Al2O3添加の場合、α-Fe2O3粒子サイズは加熱温度770℃で約100nm、650℃で50nmであった。
Al2O3やSiO2の添加により、粒子サイズがわずかに小さくなる。
770℃加熱粉の色調は現代ベンガラの色調と同程度であるが650℃加熱粉は現代ベンガラよりも格段に鮮やかな赤黄色を呈することを見出した。

以上の結果より、現代高純度試薬を用いて、吹屋ベンガラよりも色鮮やかな超高級人工ベンガラを合成する可能性を見出した。

産学官連携プロジェクトのページへ戻る産学官連携プロジェクトのページへ戻る
無機材料化学研究室トップへ無機材料化学研究室トップへ