岡山大学方式人工網膜 本文へジャンプ

概 要
 網膜色素変性症で失明した患者では、光を感知する視細胞は死滅しているが、脳へと神経線維を出す網膜神経細胞は残っている。そこで、光を電気信号(電流、電位差)に変換する人工網膜による治療が考えられている。従来の光ダイオードを集積した人工網膜に替わるものとして、私たちは光電変換色素分子をポリエチレン・フィルムの表面に化学結合させた岡山大学方式の人工網膜試作品を完成させた。この人工網膜は柔らかく薄いのが特徴で、広い視野が得られるように、大きな面積のものを丸めて、眼球に開けた小さな切開創から眼内に挿入し、さらに網膜下へと埋め込む低侵襲手術が可能である。また、光電変換色素分子が光エネルギーを吸収して生じる電位差を利用して網膜神経細胞を刺激するので、電流を出力して神経細胞を刺激する光ダイオードや電極を使った人工網膜とは異なり、外部起電力(電池)による電流増幅の必要がないという利点がある。光電変換色素の合成(株式会社 林原生物化学研究所)、ポリエチレン・フィルムへの結合(工学部)、機能および安全評価(医学部)の共同研究を行い、網膜色素変性症の患者での臨床研究(臨床試験)を目指して、薬事法に基づく製造管理、品質管理、科学的・倫理的臨床試験の準備を進めている。
 
岡山大学医学部眼科学教室HP→  ◎岡山大学工学部高分子材料学研究室HP→