岡山大学方式人工網膜 本文へジャンプ
光電変換色素を使った人工網膜試作品の開発

光電変換色素のスクリーニング
 光電変換色素の中から、先ず人工網膜に利用可能な分子を探してこなければならない。この目的のため、培養したニワトリ胚網膜神経細胞を使った簡便なスクリーニング方法を開発した。ニワトリの10日から12日目の受精卵の網膜では、まだ視細胞の外節はできていない。つまり、この時期の網膜は神経層構造ができているが、光を感知する視細胞の外節がないので、視細胞が変性した網膜のモデルになる。この網膜を摘出して、EDTA処理とトリプシン消化によって細胞を遊離し、培養する。神経細胞が多い培養3日から5日目の培養細胞に、各種の光電変換色素を添加した時にみられる顕微鏡の照明光に対する細胞反応を、細胞内カルシウム・イオン濃度の上昇という指標で観察する。
 このスクリーニング方法によって、可視光のできるだけ広い波長域を吸収し、分子構造も安定で、合成しやすい光電変換色素の中から、網膜神経細胞の反応を誘発する色素を選んだ。光電変換色素は、株式会社林原生物化学研究所(岡山市)によって合成され、供給されている。
 「光電変換色素を使った人工網膜」に関する特許は、「独立行政法人化」以前の「国立大学」であった岡山大学の教員(松尾俊彦)を発明者として、岡山大学の発明審査委員会で「発明は教員個人に帰属する」と裁定され、特許出願権を(株)林原生物化学研究所に譲渡し、同社から出願した。日本特許は2012年に成立し、アメリカ特許は2006年に成立した。特許権は、株式会社林原への移行に伴い、松尾俊彦に譲渡された。
 
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