岡山大学方式人工網膜 本文へジャンプ
光電変換色素を使った人工網膜試作品の開発

人工網膜を埋め込んだ網膜色素変性モデル・ラットの視覚
 網膜色素変性のモデルラット(RCSラット、遺伝性網膜色素変性ラット)に対して、6週令時において人工網膜を網膜下に埋め込んで、その後2週間ごとに4回、8週間にわたって行動実験を行い、ラットの視覚を検証した。対照は、光電変換色素を結合していないポリエチレン・フィルムを網膜下に埋め込んだRCSラットである。ラットの視覚を判定する行動実験は、透明な円筒にラットを入れて、その周囲で白黒縞模様を描いた円筒を時計回り、反時計回りに回転させて、ラットの行動を上方からビデオカメラで撮影した。縞模様の円筒の回転方向と合致する頭部運動を数えて、人工網膜を埋め込んだラットと対照のラットとの間で比較した。8週間の期間で、人工網膜を埋め込んだラットでは、対照のラットと比べて、縞模様の円筒の回転方向に合致する頭部運動が有意に多くみられた。つまり、人工網膜を埋め込んだラットでは、視覚がよくなっていた。  行動実験終了後、ラットの眼球を摘出して凍結切片を作成し、免疫組織化学染色を行った。人工網膜を埋め込んだ網膜では、対照のポリエチレン・フィルムを埋め込んだ網膜と比べて、神経細胞のアポトーシスが有意に減少していた。網膜神経細胞の層構築も保たれていた。つまり、人工網膜は網膜神経細胞に対して毒性がないだけではなく、神経細胞の生存を維持する作用があった。
 
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